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HOME  >  アクティブワールド  >  コーラスを楽しむ  >  コーラスを楽しむ(詳細)

コーラスを楽しむ

  1. コーラスの面白さ、楽しさについて
  2. コーラスの種類とその特徴
  3. コーラスを上達する上での留意点
  4. コーラスを楽しめる曲とはどんな曲なのか
  5. コーラスの発表会を開催するには?
  6. 演奏旅行について

コーラスの面白さ、楽しさについて

コーラスという言葉には何となく軽い響きを感じませんか?
「女声コーラス」,「ママさんコーラス」という表現はよく耳にしますが児童コーラス,少年コーラス,男声コーラスという表現には余り親近感が有りません。児童合唱,少年少女合唱,男声合唱という、いかにも芸術をやっていますという感じの表現が多く、プロ並みの活動をしている団体はこういう呼び方を好みます。

音楽という言葉は、明治時代に学校教育に洋楽を取入れる時に作られた語と言われますが、非常に上手い表現だと思っています。

音楽には、まず「楽しい音」が必要です。

これは「美しい音」と言い換えても良いのですが、ハイドンが作った「おもちゃの交響曲」やルロイ・アンダーソンが作った「タイプライター」のように必ずしも美しいとは思えない音を使っても音楽として成立っている事を思えば、やはり聞いて「楽しい音」が適切な表現だと思います。この「楽しい音」を使って「音を楽しませる」のが音楽です。もちろん、自分が「音を楽しむ」事ができないと人を楽しませる事もできません。しかし、楽しませる表現をするために「音学」も必要になるのではありますが。

コーラスに必要な声とはどんな声かという一般的な疑問が存在します。
一人一人の声は千差万別です(ただ確かに声帯模写という演芸が有るように、似た声というものは存在しますが)。その中でいわゆる美しい声というものが存在します。誰が聞いても耳に心地よい声を美声と呼びます。コーラスの不思議なところは美声だけ集めても余り面白みが無いということです。確かに悪声といわれる声は邪魔にはなりますが、プロの団体でもない限り、完全に排除しなければならない程の致命的な欠点ではないのです。音楽は美しいもの,楽しい事を表現する事が多いのですが、時には悲痛な思いを表現する事もあります。そういう場面を美しい声だけでは十分に表現する事は難しい、と私は思っています。

「おお牧場はみどり」と「中国地方の子守唄」と「荒城の月」を同じ声で聞きたいと思いますか?コーラスはハーモニーを使います。長調は明るく、短調は悲しく暗いと言われます。このハーモニーを駆使する事で、同じ人達が歌うコーラスが千変万化の表現を獲得します。和音は三つの音で作られ、メロディーに変化をつけるための基本的な和音が三つあり、これを主要三和音と呼ぶことを小学校で習いました。古今の名曲も当然この三和音をベースに作られています。しかし、これだけでは物足りないので属七和音として有名な四つ目の音を追加して表現の幅を広げました(ソ=1,シ=3,レ=5,ファ=7と数えてこういう和音を七の和音と言います)。このような事を背景に4人で組む形式=カルテットがコーラスでは一番ポピュラーです。4人もいると1人が大声でいくら主張してもアンサンブルを100%支配する事はできません。却ってハーモニーを上手く聞かせる事で一人一人の悪声(?)が目立たなくなります。他力本願で目的を達成する醍醐味、要するにチームワークの良さで目標を達成する、これがコーラスの楽しみだと考えています。

コーラスの種類とその特徴

コーラスは人の集まりで出来るものですから様々な形態が有ります。ハーモニーを作るために集団をいくつかに分けますが、これをパートと呼び日本語では声部と言います。
みなで同じメロディーを歌うことを斉唱、上下2部に分かれて歌うことを二部合唱と呼びますが、斉唱を一声の音楽・二部合唱は二声の音楽と表現します。各パートをどのように構成するかによって呼び方が異なる形態について以下に述べます。


児童合唱

ウィーン少年合唱団で世界に知られた合唱形態が児童合唱です。音域的には女声合唱と同じです。これには少年だけで構成するもの、少女も入っているものがあります。少女だけで作られた合唱団は残念ながら知りません。宝塚少女歌劇団と言うものが有りましたが現在では姿を変えています。不思議に少年だけの合唱団の方が良くハモります。児童合唱は二声か三声で歌います。


男声合唱

声変わりした男性で構成されるのが男声合唱です。
男性は声変わりすると声が1オクターヴ低くなります。したがって、テノールの楽譜はト音記号で書かれていますが、実際は楽譜の音から1オクターヴ低い音で歌われます。
しかし、プロのテノール歌手が歌っている声を聞くとどうしてもピアノで弾いた実音より高く聞こえます。つまり、男声合唱を生のステージで聞くと、楽譜を実音でピアノを弾くよりももっと和音に広がりを感じます。団員各々の音の性質が似ているという点で児童合唱と良く似ていますが、大人の深い声同士が共鳴するので非常に良くハモります。演奏する音域が狭いにも拘らず四声の曲がほとんどです。


混声合唱

高声部分をソプラノと呼ばれる高い声の女性が担当し、中声部分をアルトと呼ばれる低い声の女性とテノールと呼ばれる高い声の男性が担当し、低声部分をバスと呼ばれる低い声の男性が担当する合唱形態です。しかし中世期の特に教会では、ソプラノもアルトも男児すなわちボーイソプラノとボーイアルトが担当しました。J.S.バッハが、カントールと呼ばれる言わば音楽監督を務めたことで有名な、聖トーマス教会合唱団に代表される男性の児童と成人で構成される合唱がそれです。

男声と女声では音色が不思議に違うので性質の違うものを混ぜ合わせているという感じがします。アルトとテノールがお互いに中性に近い声(男女の特徴を殺した声)にしないとうまくハモりません。このため、最近の古楽演奏ではソプラノは女声、アルトはカウンターテノールという男声を使うケースが多くなってきました。余談ですが日本では米良美一というカウンターテノールがアニメ映画「もののけ姫」のタイトルバックを歌って有名になりましたが、声のエネルギーに関してはコヴァルスキーという人が大劇場をも圧倒する素晴しい声を持っています。

前述の教会合唱団は音域的には通常の混声合唱と同じですし同じ曲を歌うのですが「混声合唱団」とは言いませんし「同声合唱団」とも言いません。混声合唱の音楽は人間の声が出せる範囲の音域すべてを扱いますが、「混声合唱」という定義はあくまでも男性と女性がパートを分担してアンサンブルする合唱を指すと思ってください。四声が主流ですが五声以上の曲も沢山あります。オーケストラではあまり見られませんが、合唱団を複数編成して第一と第二を交互に歌わせたり同時に8声の曲として歌わせたりすることも行われます。


女声合唱

声変わりした女性で構成される合唱。大人に近づいているか、もう既に成人している女性だけに声には艶があります。しかしソプラノを例に取ると、児童合唱では地声のまま高い声を出すことが出来ますが、成人女性では男性で言うところの裏声の要素を使って高音を出すので、例えばボーイソプラノの中に一人女声が入っても多少の違和感が生じます。また、女声だけでは低いベースの音が出せないのでドラマチックな効果はあまり期待できません。繊細で美しい和音進行を表現するのに向いている合唱形態と言えます。したがって、女声合唱では多彩な表現を得るためにピアノが伴奏する曲が多いとも言えます。児童合唱よりは音色に広がりがあるので三声の曲がほとんどです。

ここで、念のため音域によるパートの呼び方をおさらいして置きます。高いほうから順にソプラノ・メゾソプラノ・アルト・テノール・バリトン・バス日本語の表現では独唱用楽譜には以下のように表記されていることがあります。女声高声・女声中声・女声低声・男声高声・男声中声・男声低声

コーラスを上達する上での留意点

コーラスは仲間との共同作業が基本となりますが、上達する王道と言うものはないと言った方が良いと思います。

私自身も男声カルテットを組んで歌っていましたが、なかなか上手くいきませんでした。
レパートリーは黒人霊歌・映画のテーマソング・演歌など様々な曲を歌ってみましたが、総じてオリジナルがカルテットの曲の場合は手本が有るので上手く行く確率が高かったと思います。例えば「筑波山麓男声合唱団」などはデューク・エイセスの演奏の記憶が頭に染み付いているのでそれを頼りに歌う事が出来ます。

最近のア・カペラ・コーラスといえば口三味線のようにベースやパーカッション楽器の代わりに声を使って演奏するケースがほとんどです。30年以上前に「ミスター・ベースマン」と言う曲が流行りましたが、現在では本当にベースマンがコーラスを支えています。

しかし、伝統的なコーラスでは大体4人とも一緒に同じ歌詞を歌います。つまり普通は、ベースはリズムを担当するパートではなく和音を支えるパートとして機能します。そして、時々リズムを刻んでコーラスに変化を与える役割も担います。

4人が一緒の歌詞を同時に歌うと言う事は、1人だけがメロディーを歌って他の3人は和音を付けているだけという関係になります。そうすると他の3人はメロディーとは全くかけ離れた旋律を歌わなければなりません。ここにコーラスの難しさが有ります。メロディーがロマンチックであればあるほど、他の3人はその気分に浸れないまま同じ歌詞を歌う羽目になります。そうすると当然、数に勝る3人の歌い方でその曲の雰囲気が決まってしまいます。つまり、他の3人には自分に課せられた旋律をメロディーと同じ雰囲気で歌うという頭の良さが必要になるのです。そうは言っても縁の下の力持ち状態が年中行事になってしまうとやはりストレスが溜まります。そこで、カルテットの演奏を良く聞いてみると時々バリトンやベースがメロディーを歌っている事がわかります。こうして、御互いがメロディーでない部分を歌うときの難しさを共通認識として持つ事がコーラスを作っていく時にとても大事なことになります。

全員がメロディーの雰囲気を一緒に歌えるようになれば次に実現しなければならないのはハーモニーを良く響かせる事です。実はこれがコーラスにとって最大の難関です。ハーモニーをきれいに響かせるためにはバランスが重要です。音程のバランス、音量のバランス、音色のバランス、と色々なところに生じるバランスに気を配らなければなりません。カルテットのように各旋律を歌う人が一人ずつしかいなくてもこのバランスを取るのが非常に困難です。まして、各旋律を複数の人が歌う場合は各パート間のバランスだけでなくパート内のバランスも取る必要が出てきます。そのために、どうしても客観的にバランスを整える第三者が必要になってきます。この第三者が指揮者です。アマチュアの合唱団には指揮者の言うとおりに歌っていれば良いコーラスができると思い込んでいる人達が大勢いますが、これは大きな勘違いです。

自分の役割をリアルタイムに認識してそれを最大限に表現する能力を一人一人が持つ事こそ上手なコーラスを実現するための必須条件です。

コーラスが上達するにはこの様に自分の能力を客観的に認識し、技術的に練磨する事が必要です。さらに、バランスを取るために自分が出さなければならないところと引かなければならないところを理解して歌うことが必要です。
プロジェクトは専門家の能力を結集して物事をやり遂げるタスクフォースですが、コーラスも各パートの専門家を結集してアンサンブルを作るプロジェクトチームであることを念頭に置いて練習すると上達が早いと言うのが私の持論です。

コーラスを楽しめる曲とはどんな曲なのか

日本でも良く知られたコーラスグループは、ザ・ピーナッツ、レターメン、マンハッタントランスファーなど数多いですが、いずれもア・カペラではなく楽器を伴奏に使います。
本会の主旨から言って何時でも何処でも楽器無しでコーラスを楽しめるア・カペラの曲を中心に置くので、こういったグループの曲を歌うことはやや困難かと思います。コーラスの種類のところで述べましたが、男声合唱以外では大半の曲が器楽−特にピアノ−の伴奏付きです。また、ア・カペラという名称の通り無伴奏の曲は教会音楽に多いので、残念ながら日本語で歌える曲は数少ない状況です。

結論を先に申上げると、歌いたい曲をア・カペラに編曲するのが一番だと思います。

音楽の世界には作曲と編曲というカテゴリーがあります。日本レコード大賞などでも作曲賞と編曲賞が有ります。メロディーそれ自身に付ける和音の基本的な流れは作曲家が作ります。もちろんフルバンドのオーケストラ譜を書いてしまう作曲家も居ますが、通常は編曲者がどの楽器を使って曲を盛り上げるかを綿密に計算してオーケストラ譜を書き上げます。時には作曲家の想像を超える様な優れた編曲も出て来ます。

小学校時代に必ず歌った曲で滝廉太郎が作曲した「花」と言う曲が有ります。実は最近まであの曲は童謡としてメロディーを書いたのだとばかり思っていました。しかし、あの曲の一番は滝廉太郎その人が書いた二部合唱で何と日本で最初の合唱曲なのです。そして、二番はソロで歌うように作曲されています。三番はまた合唱になります。しかし、小学校では三番まで全部同じハーモニーを付けて歌ったように記憶します。まさか明治時代の作曲家が合唱を作曲しているとは夢にも思わなかったので、「花」も歌曲としてメロディーだけを滝廉太郎が書き、文部省が委嘱した編曲家がコーラスに編曲したのだと思い込んでいた訳です。

私たちが良い曲で歌いたいと思う曲が、このように作曲家自身でコーラスにしてあれば問題ありませんが、世界中を見てもコーラス用に作られた曲は数少ないので、人気のある曲をコーラスに編曲した曲集が何冊も出版されています。ただし、無伴奏の曲はここでも希少であるというところがア・カペラにトライする時の難しさと言えます。

本会のレベルから言って、コーラスの初級レベルの曲から馴染んで行くのが良いと思います。ところで、合唱の初心者を中級者に育てるメニューが有るかと言うと、実は無いに等しいと思います。しかし、大まかな方向性というものは有りますのでそれについて述べます。

最初はリズムが易しくメロディーも馴染みのある曲で、しかも和音進行が簡単な曲でハーモニーを作る事から始めるのが一般的です。ママさんコーラスが歌う事で有名な「夏の思い出」などはこの条件にぴったりの曲です。段々慣れてくると、リズムが少し難しい曲やスピードの速い曲で和音進行は簡単な曲が歌えるようになります。次には和音進行の難しい曲に挑戦する事になります。こういう曲はハモるという感覚が中々掴めないので、ハーモニーに酔い痴れるところまで行くのが相当に難しいと言えます。

音楽の3要素はリズム・メロディー・ハーモニーと言われているので和音進行の難しい曲を制覇すればコーラスは免許皆伝かと言うと、この先にもっと難しい構造をした曲が待ち構えています。それがポリフォニーと言われる複数のメロディーで構成される曲で、その頂点に君臨するのがバッハと言われています。ポリフォニーは一つのメロディーに相応しい形で進行する和音をつけるのではなく、複数のメロディーが絡み合った結果和音が様々に変化するという特徴をもった曲です。

キャンプファイヤーで良く歌われる「静かな湖畔」と言う曲が有りますが、輪唱と言って歌の開始部分をずらして時間差を作って歌う曲として有名です。こうして出来た複数旋律の曲をカノンと言います。こういうパターンを複雑にした曲がポリフォニーと呼ばれ、ルネッサンスの頃から主に宗教曲で歌われていました。一方の、一つのメロディーを和音で支える構造の曲をホモフォニーと言います。現代の作曲家は、その両方の要素を駆使して曲を作っています。ホモフォニーの大家ベートーベンでさえ、第九交響曲の合唱の中で二重フーガというポリフォニーのテクニックを使って作曲している部分が有ります。

さて、本会が対象とする皆さんがどういう曲からコーラスを始めたらよいかというと、実は高校の教科書に載っている程度の曲が一番適当なのですが、その多くはピアノ伴奏曲です。しかし、とりあえずピアノ無しで歌う事から始めてみることをお薦めします。

少しずつハモる様になった所で市販されているコーラスに編曲されたポピュラー曲で、譜面をみて簡単そうな曲を歌ってみるというように進めていったら良いと思います。

原曲がコーラスで、CD等で聞いて良いと思う曲が必ずしも歌い易いとは限りません。
メロディーパート以外は歌ってみるとつまらなかったり、音程を取るのが難しかったりします。この苦行を甘んじて受入れる度量が無いとコーラスの面白さに中々辿り着けません。その困難さを乗り越えられさえすればコーラスの面白さに浸ることが出来ます。

因みに、児童合唱で有名になってママさんコーラスでも良く歌われる「ほたる来い」という小倉朗作曲の合唱曲は歌うのは難しいですが聞いて楽しい曲です。

混声合唱でもア・カペラの曲は宗教曲か、マドリガルという中世ヨーロッパの世俗曲が大半です。ピアノ伴奏付きであれば邦人作品と呼ばれる日本人作曲家の合唱曲が沢山有りますが、組曲と言ってオーケストラで言う所の交響曲のように何曲も集まって一つのテーマを謳い上げる形式が多いので、歌いこむのにかなりのエネルギーを必要とします。誤解を恐れずに個人的な感想を言えば、佐藤眞という作曲家の組曲は雄大な感じのする曲が多いですが、あまり難しいハーモニーを多用せず、歌って充実感を感じる曲が多いと思います。外国曲では、言葉的にはラテン語の歌詞なので苦労しますがモーツァルトのレクイエムはどのパートを歌っていてもコーラスとして楽しめます。

男声合唱は、高音を出すトップテノールと男声の限界に近い低音を歌わされるベースに声の出る人がいるとそれだけでハモります。日本には多田武彦と言う男声合唱の特徴を最大限に引き出した作曲家がいるので、外国の作曲家に頼らなくても無伴奏の良い歌が沢山有ります。外国曲を歌いたい場合のお薦めはやはりシューベルトの合唱曲ですが、ドイツ語の歌詞である事を含めて上級者向けである事を承知しておかれたいと思います。

最近は図書館でもCDを用意していて試聴させてくれるところが増えているようなので、色々な曲を試聴してみる事をお薦めします。

コーラスの発表会を開催するには?

コーラスの腕前がだんだん上達してくると、その上手さ(あるいは下手さ)を第三者に評価して欲しくなります。日本各地にある子供達の音楽教室でも発表会は最低1年に1回は開催されています。また、発表会の日取りが決まれば其処に向けて練習にも励みが出てくるものです。

今回は、練習が進んだ頃に必ず話題に上る発表会を開催するに当り、考慮する必要のある事柄に関して述べてみたいと思います。 まず、最初に考える必要があるのは、発表会の開催時間です。

わざわざ聴衆を集めて聞いて貰うのですから、会場に来て貰い易い日時を選定する必要があります。さらに、会場に居て貰う時間は最低でも1時間は必要です。
大きな団体のステージ構成は4ステージというのが標準です。1ステージは20分程度掛かります。ステージ間に団員の入退場が必要であれば5〜6分見込みます。2ステージを終えた時点で10分〜15分の休憩を入れます。さらに後半に2ステージの演奏を行って2時間の演奏会にするのが普通です。18時30分開場で19時開演、21時終演というパターンの演奏会が多いのはこのためです。この時間を目安に曲を選定します。コーラスに限らず1曲の平均演奏時間は3〜4分ですから、これを単位に何曲演奏できるかを検討します。

では、少人数のコーラス団体の場合はどうでしょう。
練習回数も多くレベルも高い団体であれば、これまで述べた4ステージ2時間の演奏会を開催することも可能です。しかし、人数が少ない分ダイナミクスの幅が必然的に小さくなります。そして、お互いの声を支え合うために大人数の団体で歌うより一人一人が消費するエネルギーは大きくなり、それだけ体力を消耗します。20人以下のコーラスでは3ステージ程度に演奏会の規模を抑えるのが無難です。また、練習回数が少ない団体や、初心者が多い団体の場合は、練習効率の低さが問題になります。上手な合唱団が3回で終わる練習を6回以上掛かるとすれば、それだけで2倍の練習時間が必要となるので、その場合は2ステージ分の曲目をこなすのが限界ということも有り得ます。

次に会場の大きさを考える必要があります。団員が5人ずつ集客できるとすれば20人のコーラスでは100人の会場を確保すれば良い事になります。しかし、小さい会場で満席になると今度は演奏者も聴衆も窮屈さを感じることになります。大体満席時の80%の入場者があると大入りの雰囲気になるので、そのあたりを目安に会場を選定するのが良いと思います。費用が安くて響きもそこそこ満足できる会場として人気が有るのは教会の礼拝堂です。一例として、東京の市谷にあるルーテル教会会堂ではクラシックの小規模演奏会が頻繁に行われています。

人数が少なくても集客力のある団体であれば、次に検討するのは公共団体の運営するホールです。東京23区であれば区立の公会堂やホールが各所にあり、小ホールであれば200人規模の会場もあります。ただし、公共施設は開催予定月の半年から1年前に抽選で利用権を付与されるケースがほとんどなので、コーラスの出来が良くなって来たので3ヵ月後に演奏会を開催しよう、などという要望には応えられない場合がほとんどです。

次に、演奏会を有料にするか無料にするかを検討する必要があります。
有料で演奏会を開催する理由は、プロの音楽家の出演料を聴衆に負担して貰う、会場費を聴衆に負担して貰う、演奏に芸術的価値があるので心付を出して貰う、というのが代表的なものです。この最後の理由はプロが有料公演をする根拠です。では、素人の場合はどうかといえば最初の理由がもっとも重要な根拠です。一般的に団体運営では団員が月次会費を拠出して練習会場費と指導者謝礼を負担します。発表会を計画した場合、会場費を予想入場者数で割って入場料を決定する方法もあります。

指揮者・伴奏者、さらにオーケストラなどを呼べばその費用は高額になるので入場者に負担して貰い、その対価として良い演奏を提供するべく努力する、というのが素人コーラスの一般的な演奏会運営方法です。

次に、日本音楽著作権協会への著作権料支払という課題があります。また、楽譜をコピーして練習することは出版著作権侵害に当たる場合が多いので、気をつける必要があります。また、演奏会を入場無料にした場合でも音楽著作権登録されている曲を演奏する場合は、会場定員に対して一定料金を支払う等の義務があるので、必ず著作権侵害にならないかどうかをチェックしておく必要があります。

このように、発表会を開催するには様々な課題をクリアしなければなりませんが、客席に向って演奏することの充実感は筆舌に尽くしがたいものがあるので、機会があれば発表会を開催することをお勧めします。

演奏旅行について

コーラス活動が軌道に乗ってくると、まず定期的に演奏会を開くようになります。大体は毎年1回のペースですが、中には2年に一回と言う団も有ります。

男声および混声の一般合唱団では、練習回数が週一回というのが通例です。仕事を持つ男性は定時退社の日を週一回設けるのがやっとという世間の状況では、週二回以上の練習日を設定しても男声パートの人数がなかなか揃わないという実情を反映しています。

それでも、定期演奏会が定着すると、今度は他流試合をしたくなって来るのが人情です。

地元では評判を取ったとしても、他の地域でも評価されるのか、が気になって来ます。

コンクールと言うのはそれぞれの団体が2曲演奏して審査員に優劣の評価を付けて貰う場ですが、コンサートでは、演奏レベルに余り差が無いような数ステージを構成しなければなりません。そういうステージにわざわざ遠くから足を運んで貰うよりコーラスが演奏会を出前する方が、より多くの聴衆に聞いてもらうことが出来ます。これが演奏旅行の基本概念です。ただ、気を付けなければならないのは声の状態です。気心の知れた団員との旅は楽しいですが、移動中に喋りすぎると声帯を疲れさせます。また、現地到着から演奏までに時間の余裕がないと、演奏の質が落ちます。そう言う点に気を配りながら、旅行日程を組む必要があります。

日程を組むためには、何処に行って演奏するかを決める必要があります。日本全国に卒業生が居る大学の合唱団では、各地のOB会組織に連絡をとって演奏会の後援を依頼します。団員の中でその地域の出身者に現地のOB会との窓口役を務めて貰い、演奏旅行マネージャーのサブとして活動して貰います。実際の演奏会のプロモートはOB会が行います。

期間的には、学生の場合は大体一週間程度の日程で各地を演奏して回ります。

一般合唱団の場合は各地にそのような組織が無いので、普通一回の演奏会で終わります。その場合、現地出身者がその地域の有力団体(通常は合唱団)と連絡を取り、ジョイントコンサートの形で演奏会を企画します。現地で有料の演奏会を開く場合は、団同士で成功報酬を取り決める場合があります。しかし、素人コーラスの演奏会なので、出演者に還元されることはまずありません。したがって、旅行担当マネージャーが一番気を使うのは、旅行費用とその催行品質です。自腹で旅行するため安いからといって品質の悪い移動手段や宿泊設備をあてがうと、演奏の品質に影響が出ます。参加者の満足度を高くするために費用も高くすれば参加者が減り、やはり演奏品質に影響が出ます。海外遠征の場合は、現地側の旅行会社をアサインするのも手ですが、現地に余程精通している人が担当しないと問題が多いので、現地の旅行社と良好で強力な関係を築いている日本の旅行社に依頼するのが無難です。

演奏旅行の概要が決定したら、あとは良い演奏をするための努力に力を注ぎます。現地の評価が高ければ、次の声が掛かることもあります。ただし、逆に受入先でジョイントした団体が当地への演奏旅行を希望して来る事もありますので、その受入体制については演奏旅行に行く前から検討しておいた方が良いと思います。

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